薬剤師がAIに負けるって本当?AIにも負けない将来性のある薬剤師になるには?
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最近話題のAI(人工知能)技術。実は薬剤師の世界にも投入される可能性があるということをご存じですか?
あまり関係ない、と考えているのならその考えは甘いかもしれません。本格的にAI技術が薬剤師のフィールドに投入されたら、薬剤師の雇用減少にもつながると言われています。2019年現在ではまだ薬剤師業界におけるAIによる影響はさほどないようですが、今後のAI技術の発展によって薬剤師の需要が減ることは暗黙の了解です。業界内では、既に今のうちから「薬剤師の将来はないのではないか」と危惧されているほどです。
そんな中、薬剤師として生き残る手段はあるのでしょうか。……実はあるのです! この記事では、AIの詳細とともに、AIが医療業界に浸透しても勝ち残る薬剤師パワーについて指南します。
目次
薬剤師の仕事は将来あぶない…と言われている理由はAIの存在
薬剤師の仕事についてもほかの職種と同様に電子化が進み、いずれはAIが薬剤師の仕事を奪ってしまうのではないか、と恐れられています。事実、AIの進歩により、薬剤師の業務に取り入れている企業においては業務の効率化と正確な薬歴管理を実現しているといいます。
そんな薬剤師の立場を脅かすAIについて、詳しく見ていきましょう。
そもそもAIって?
AIとは「Artificial Intelligence」の略で、人工知能のことを指します。AIにはひとつのことに特化した「特化型人工知能」、与えられた情報を元に自ら考え、行動する「汎用人工知能」の2種類があり、仕事において活躍するスタンダードは前者となっています。あまりピンと来ない人も多いと思うので、具体的な例を挙げて説明しましょう。
前者については、画像や音声認識、自動運転車などに搭載されている技術で、その領域でのみ実力を発揮します。
一方、某携帯ショップの店頭などでもよく見かける「ペッパー君」。これは、感情エンジンを搭載したロボットとして有名ですね。また、犬型ロボットで知られるアイボも人口知能が搭載されています。これらは「汎用人工知能搭載」となります。ロボット掃除機もこれに当たり、割と私たちの生活に身近な存在であることが分かりますね。
薬剤師の仕事はAIで…と言われているのはなぜ?
現実問題、薬剤師の仕事においてはAIの進出はまだまだ先だと考えられています。ただし、今後、AI技術の発達によって、AI薬剤師の導入を検討する医療機関も増えてくると考えられます。
AI薬剤師の主な舞台は、①調剤②服薬指導③薬歴管理です。というのも、この3つのジャンルにはデータが蓄積されているため。その莫大なデータを使用することで、患者さまにとって最適かつ確実な薬剤の処方が可能となります。また、新しい薬が追加になった場合にもそのデータは上書きされます。そのため、薬剤師の仕事がかなりの部分でショートカットできるようになり、医療機関としては人件費も削減でき、効率的な経営を実現します。
AIは素晴らしい。でも人にしかできないこともある
AI技術の発展は素晴らしいですが、その一方で、人にしかできないこともあります。それは、薬剤師の業務のひとつであり最大の才能である人とのコミュニケーションです。
AIには患者さまの「悩みを聞いて不安を取り除く」といった行為は実現不可能です。気遣いや思いやり、言葉がけができるのは人間ならではの特権です。また、病院勤務の薬剤師であったら医師や看護師との連携も重要になってきます。データの処理などはAIに任せられても人間間の臨機応変な対応は任せることができません。
そして「地域のかかりつけ薬剤師」を目指すためには、患者さまから信頼されることが最優先です。AIにその役割が務まるわけはありません。いつの時代も、最後に行き着くのは人としての「心」なのです。
時には感情の起伏があっても良いでしょう。それが人間らしさであるし個性です。その人間らしさと個性に惹かれ、病院や薬局、ドラッグストアを訪れる患者さまも多いのです。
そう、地域に愛される医療機関になるためには、AIによる正確さよりも「人となり」なのです。
AIにも負けない薬剤師って?強みを身につけよう
人間である以上、人為的なミスは発生する可能性があります。AIを利用することによって、かなりの確率で「データ上の」ミスは防ぐことはできるでしょう。だけど、本来の薬剤師の使命のひとつである「コミュニケーション力」までAIに頼るようになったら薬剤の世界はどうなるのでしょうか。
体調が悪い時にAIに心配をされてもイマイチピンとこないはずです。生身の人間と直接話して元気や勇気、安心をもらいたい! とくに体が弱っている患者さまであれば、そう考えるのは当然のことです。
患者さまの精神状態もさまざまです。AIにはそれをくみ取る能力はまだ皆無です。今後さらに技術が発達しても、人間の温かみに勝ることはないでしょう。
人間がAIに勝つ最大の武器「コミュニケーション力」を強化するためには
薬剤師の最大の武器であるコミュニケーション力を強化するためには、患者さまとの信頼関係をしっかりと築き、この人「だから」薬をしてもらいたいと思われるようにすることです。
とくに薬剤師の職場である病院、薬局、ドラッグストアは、高齢者の患者さまも多いものです。人間関係が希薄なことが問題視される現代において、生身の人間と会話し、悩みを相談し、「ありがとう」と言葉を返せることができるのは、痴呆症の予防にも効果的です。何より、病気の治癒以前に「生きている」という実感も与えることができるはず。これがAI薬剤師の提供できない致命的な欠点であり、生身の人間にのみ可能にできる最大の功労だと思われます。
新米薬剤師でまだ患者さまを把握していない場合は、積極的にコミュニケーションを取るようにしてください。始まりは「こんにちは!」などの挨拶からでも構いません。誠意を持った対応を続けていくうちに、AI薬剤師では太刀打ちできない「人間スキル」「対応力」を身につけられることでしょう。そしてそのスキルは、薬剤師として何歩も成長させてくれるはずだし、今後の薬剤師の命運を握っていくはずです。
時代のニーズにマッチした医療スキルや経験を身につける
薬剤師として生き残るためには、コミュニケーション力はもちろん、スキルや経験を今のうちに身につけておくことも重要です。それでなくても薬剤師が飽和している昨今、選ばれる薬剤師になるためには、ただ資格を持っているだけでは不十分です。積極的に新しいスキルを身につけることで、薬剤師としてのさらなる道を拓くことができます。
例えば、管理薬剤師やエリアマネージャーとしてスタッフや医薬品を管理する「管理者スキル」もそのひとつです。また、今後さらに増加するインバウンド(訪日外国人旅行)対策として、「英語スキル」も重宝されることでしょう。
とくに最近重要視されているスキルのひとつに、「在宅医療のスキル」があります。高齢化や地域の過疎化が進む中、国も在宅医療を推進しています。
これらのスキルはたとえAI技術が発展したとしてもAI薬剤師が入ってくることが難しい領域です。こうしたスキルを身につけることで、薬剤師として生き残ることができる可能性はグンとアップします。
「人工」は優れているけれど、「人間」の心に勝るものナシ!
単純な事務作業やデータ処理などについては、残念ながらAIは人間を超えています。ただし、感情のコントロールやコミュニケーションについてはAIが人間に勝ることは考えられません。これは患者さまに寄り添うことがミッションのひとつである薬剤師の世界ではとくに言えることです。
今後の見通しとして、薬剤師の業務の一部はAI化が進んでいくでしょう。ただそれは、決して悪いことではありません。業務効率化、人件費削減、その分患者さまに確実で間違いのない治療を行うことが可能になります。そしてその時こそ、薬剤師の本領を発揮するステージです。AIと人間、お互いの強みを活かして共存し、より良い医療の現場を目指していきましょう。